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東京高等裁判所 昭和46年(ネ)1934号 判決 1975年3月19日

控訴人

株式会社晃電社

右訴訟代理人

佐藤恒雄

被控訴人

栃木観光開発株式会社

右訴訟代理人

手塚敏夫

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実《省略》

理由

一控訴人の請求原因(一)の事実(和解による賃貸借の成立)は当事者間に争がなく、右争のない事実に、<証拠>を総合すると、左の事実が認められる。即ち、

被控訴人は、本件各土地及び周辺の土地を利用してゴルフ場を経営すべく、昭和三四年六月頃控訴人との間の約定で被控訴人買受予定の他の土地との交換等を条件として控訴人所有の本件各土地の使用を開始し、又同じ頃周辺土地の各地主からいずれも期間一〇年の約で土地を賃借りしてその使用を開始した。ところがその後控訴人との間に右交換契約等をめぐつて紛議が生じ、その結果昭和四一年六月一三日宇都宮地方裁判所栃木支部において訴訟上の和解が成立し、結局控訴人は被控訴人に対し本件各土地を賃貸することを承認するに至つた。しかしその賃貸期間に関し、控訴人は上記他の賃貸借と同じくこれを昭和三四年六月より一〇年とすることを強く求めたのに対し、被控訴人としては右によれば実質上の賃借期間が僅か三年位となるとして一応これに反対したものの、控訴人の右希望が強く、又担当判裁官のすすめもあつたため、少くとも一回は当然に期間一〇年として更新されることを条件として右の希望を受け容れることとし、控訴人もこれを了承したため、右和解調書において、期間を昭和三四年六月一四日より一〇年としたうえ、これに続き「右期限の到来したとき賃貸借期間は当然更新する。」との条項が挿入された。なお控訴人を除く他の賃貸人との間では、昭和四四年六月頃すべて賃貸借の更新が為されている。

以上の事実が認められ(る。)<証拠判断省略>

二ところで、ゴルフ場用地の賃貸借は民法の規制に服するものと解されるところ、民法六〇四条二項本文によれば当事者はその賃貸借期間を合意をもつて更新することができるのであるが、右の合意に関し、同法六〇三条の制約を受けない一般の賃貸借については、当初の契約締結時において右更新の合意を為すことは一向法の禁ずるところではなく、ただ同法六〇四条全体の法意、殊に同条二項但書の趣旨からみて、当初より実質上契約期間の制限を潜脱する如き更新の合意(例えば期間一五年の契約において契約当初に更新後の期間をも一五年とする更新合意をなし実質上の期間を三〇年とするが如きもの)は法の制限を超える部分において許されず、当初期間と更新後の期間が合して、更新合意のとき(即ち右の場合当初契約締結のとき)より二〇年以内たることを要するものと解すべきである。

これを本件についてみるに、前認定の各事実からみると、本件は民法六〇三条に該る場合でもなく、又右認定のとおりの本件和解に至るいきさつ、本件更新合意条項挿入の経緯等に照らし、右条項にいう「当然更新」は一回限りのものと解するのが相当であるので、本件賃貸借の期間は、当初期間一〇年及び更新後の期間一〇年の計二〇年であつて、右更新合意のとき(即ち和解成立のとき)より二〇年を超えるものではないから、右合意更新条項は何ら法に触れるものではない。

控訴人は、右条項の存在により本件賃貸借が実質上無期限化するものと主張し、これを前提に右条項をもつて民法九〇条により無効であるとし、或いは本件賃貸借を期間の定めなきものと同一視すべしというが、その然らざることは前判示のとおりであり、又民法六一九条に徴し本件賃貸借は更新後期間の定めなきものとなるという控訴人の主張も、本件事案に関する限り控訴人独自の見解として到底採ることを得ない。

三《省略》

(古山宏 青山達 小谷卓男)

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